SIPはSIPメッセージと言うテキスト形式のデータをやりとりすることで、セッションを確立します。具体的に言うと、TCPやUDPの様なトランスポートプロトコルのデータ部(=ペイロード)にSIPメッセージを載せ、これを通信者同士で送受信し合うことで、必要な情報を共有していきます。
SIPメッセージはその内容によってリクエスト(要求)とレスポンス(応答)の2種類があります。リクエストはセッションを開始/変更/終了しようするときにUACから送出されるSIPメッセージです。レスポンスはUASからリクエストの成功または失敗を返却するためのSIPメッセージです。
SIPメッセージは大きく分けて以下の3つの部分で構成されています。
- スタートライン
-
リクエストの場合はリクエストの種類(メソッド)、レスポンスの場合は成功または失敗を表すコード(ステータスコード)を記述。
- ヘッダ部
-
SIP自身のプロトコルで必要となる情報(=発着の論理アドレス、ルーチングの為の情報等)を記述。
- ボディ部
-
セッションを確立させる為の情報(=発着のIPアドレス/ポート番号、メディア情報等)を記述
スタートラインはリクエスト、レスポンスでそれぞれ以下の様な形式で記述します。
- リクエスト
-
INVITE sip:bob@biloxi.com SIP/2.0
- レスポンス
SIP/2.0 200 OK
ヘッダやSDPの詳細の説明はここでは割愛します(基本的すぎるので)。RFC3261に記述されているSIPメッセージの例を参考までに示しておきます。
リクエストの例(INVITE)
INVITE sip:bob@biloxi.com SIP/2.0
Via: SIP/2.0/UDP pc33.atlanta.com;branch=z9hG4bK776asdhds
Max-Forwards: 70
To: Bob <sip:bob@biloxi.com>
From: Alice <sip:alice@atlanta.com>;tag=1928301774
Call-ID: a84b4c76e66710@pc33.atlanta.com
CSeq: 314159 INVITE
Contact: <sip:alice@pc33.atlanta.com>
Content-Type: application/sdp
Content-Length: 142
レスポンスの例
SIP/2.0 200 OK
Via: SIP/2.0/UDP server10.biloxi.com;branch=z9hG4bKnashds8;received=192.0.2.3
Via: SIP/2.0/UDP bigbox3.site3.atlanta.com;branch=z9hG4bK77ef4c2312983.1;received=192.0.2.2
Via: SIP/2.0/UDP pc33.atlanta.com;branch=z9hG4bK776asdhds ;received=192.0.2.1
To: Bob <sip:bob@biloxi.com>;tag=a6c85cf
From: Alice <sip:alice@atlanta.com>;tag=1928301774
Call-ID: a84b4c76e66710@pc33.atlanta.com
CSeq: 314159 INVITE
Contact: <sip:bob@192.0.2.4>
Content-Type: application/sdp
Content-Length: 131
セッションを確立させるための情報はSession Description Protocol: SDPというプロトコルに従って記述するのが一般的です。SDPは現在はRFC4566で定義されています。
SIPでセッションを確立させるには、まず発信者がSIPメッセージにメディア情報を記述したリクエストを出し、着信者がその中から対応可能なメディアを選択したレスポンスを返却することで、通信に使用するメディア情報を共有します。このようにセッションを開始するためにSIPメッセージにメディア情報を載せることをオファーといい、それに対して対応可能なメディア情報を返却することをアンサーといいます。このオファーアンサーモデルについてはRFC3264で定義されています。
ボディ部にはSDPを記述しますが、SDPはオファーもしくはアンサーのときのみ必要なので、それ以外の場合はボディ部は空になります。
ここではリクエストでオファーし、レスポンスでアンサーする例をあげましたが、場合によってはレスポンスでオファーし別の何らかの方法を使ってアンサーを返却することもできます。詳しくはRFC3264を参照してください。
ボディ部にはセッションで利用されるメディア情報をSDPで記述しオファーアンサーで共有する、ということは上述しましたが、ヘッダ部に記述される情報はどのように利用されるのでしょうか。実はここからがSIPの真髄です。ルーティングやらダイアログやらターゲットやら、複雑な話がたくさん出てきます。それらについては次回以降で説明していきます。